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介護マンガ「よろこびのうた」のあらすじ、感想!老々介護の結末とは

 よろこびのうた 著:ウチヤマユージ ☆☆★★★

広告でたまーに見かけるマンガ「よろこびのうた」。出版は講談社。

表紙で分かるように、ハッピーなマンガではありません…。

老々介護や夫婦愛について考えさせられる!という感想もある一方で、謎が謎のままですっきりしないという声もあります。

 




あらすじ

2006年3月。

F県勝野市で、老夫妻が火葬場で焼死する事件が起きた。

 

遺書が遺されており、妻が認知症を患っていたことから、警察では老老介護を苦にした心中と見られ、マスコミでは社会問題を浮き彫りにするショッキングな事件と報じられた。

 

半年後、雑誌記者の伊能は現地取材のため、勝野市を訪れた。限界集落である住民たちの口は重いが、伊能の調査、住民たちの告白により、詳細が明らかになった。

 

事件前年の2005年6月。

 

心中した青木夫妻は、老老介護の生活ながらも、穏やかに暮していた。

 

あるとき妻の和子は、近隣住民の赤星が、息子の幸太郎を虐待する場面を目撃した。

幸太郎から救いを求められた和子は、とっさに赤星を殺害してしまう。

 

夫青木や彼と親しい近隣住民たちがそれを知ったが、青木の懇願や、赤星が悪名高いこと、認知症の和子は警察の取り調べには耐えきれないであろうことから、赤星の遺体を処分し、事件を隠蔽した。

 

和子は事件の記憶を失い、父を憎悪していた幸太郎は寺に引き取られ、穏やかな日々が戻った。

 

1か月後、和子の認知症が徐々に治癒し、それと共に殺人の記憶も甦り、次第に罪悪感が和子を苦しめ始めた。

 

それを知った青木は、老齢の自分の命が長くないであろうことから、心中を持ちかけ、和子も同意した。

 

そして半年以上におよぶ入念な準備の末、夫妻の結婚記念日に心中した。

 

共に事件を隠蔽した住民たちも、夫妻から届いた手紙で、初めて心中の決意を知ったのだった。

 

真相を知った記者伊能は、夫妻の最期を、ある意味で幸せな最期だったかもしれないと、想いを馳せた。

 

青木夫妻の最期の日である結婚記念日、夫妻はカーステレオで交響曲第9番『喜びの歌』を流しつつ、火葬場で手を取り合い、生地の土に還ることを喜びつつ、笑顔で炎に包まれた。

 

最期は火葬場で、2組の骸骨が手を取り合う姿で、物語が終わる。

 

感想

老々介護に寄る心中。

その裏に隠された殺人への罪悪感…。

 

中々重い話です。絵があまり上手ではなく、のほほんとしたタッチなのがまた妙に心に残ります。

 

話の中心は老夫婦についてです。青木真とその奥さん和子の生活、過去に犯した罪がどんなもので、二人はなぜ心中の決断をしたのか。

 

心中に思い至るまでの日々が、介護ばかりなのですが、悲惨さは無いんですよね。

 

和子が「デイサービスは嫌。知らない人が家にいるのは…」と言うと、夫は「介護士は何度も家に来ている人だけど、嫌なら仕方ないね」と微笑んで返します。

 

和子がぼけた発言をしても、夫は責めません。小さな村のみなさんもすごく優しい。

でもそこに暴力的なアルコール依存症の男と子供が現れ、夫婦の生活は一編します。

 

男が小学生の自分の子供を、外で殴りつける場面を、和子が見てしまいます。

和子はとっさに車のハンドルを握り、男をひき殺します。

 

大きな音に気づいた夫と町の住民が駆けつけると、男は死んで手の施しようがない状況でした。青木真は自分がしたことにしようと案を出しますが、そうなると和子は一人になってしまう。

 

そこで危ない仕事をしていた住民の一人が、男を硫酸で溶かすと言い出します。

中々ご都合主義的な展開ですが、死体の処理は終わりました。

 

暴力を受けていた男の子は、寺に預けられます。

 

ひと段落と思いきや。

 

和子は夢で男を殺した場面を何度も見てしまいます。

そして認知症ながらも和子は人を殺したと確信します。

 

良心の呵責を感じていた和子に、夫の真は病院で高血圧が進行し命が危ないという診断をされたことを話します。

 

そして心中しようと持ち掛けるのでした。

 

他にやりようがあるんじゃないかと思うのですが、でもよく考えればお金もない2人が楽しく健康のまま過ごす道はもうありません。

 

心中しようと決めた2人はなんとも穏やかな顔で、それがまた胸を締め付けます。

 

死ぬなんてダメだ、殺人の罪を償うべきだと、思う読者は居ないでしょうけど。

それがまた悲しいことだと思うんですよね。

 

心中するのも仕方ないと思ってしまう、それが正しいとされる現実が悲しいです…。

 

町の人たちは優しく、事件を調べる記者も優しい男です。

優しさが溢れた世界だからこそ、自殺という結果になってしまった。

 

でも苦しみの中の死ではなく、夫婦で土地に還れる喜びさえ感じてしまう死で、それがなんとも言えない終わりなんですよね。

 

もし私が認知症になったら

もし自分が認知症になり、恋人が病気になり、老々介護なんてことになったら、どうしようか。「よろこびのうた」を読み終わると嫌でも考えさせられました。

 

私だったら、どうでしょう。

 

老人ホームで一人生きるか、どちらかが死ぬまで介護をしてもらうか…。迷惑をかけるならいっそ死ぬという選択肢もあるような気がします。

それまでに安楽死が日本でも認められるようになるといいんですけどね。

 

死って悲観的でどうしても避けたいもの、ってわけでは無いと私は考えているので、本作は結構受け入れやすかったです。

悲しいマンガだけど、鬱っぽくはならないマンガです。

 

「よろこびのうた」はこんな人におすすめ!

家族や人情物語が好きな方!

老々介護、人生の終わり、認知症に興味がある人。